TEAM BRIDGESTONE Cyclingと振り返る2023シーズン
2023年の暮れも押し迫った12月某日、チームパーシュートで3年ぶりに日本記録を更新し、個人種目でも世界選手権でメダルを獲得するなど、パリ五輪に向けて躍進を続けるTEAM BRIDGESTONE Cycling(トラック中長距離及びロードレースチーム)にロングインタビューを敢行。トラック競技の経験を活かしながら、国内のロードレースシーンでも異彩を放つ彼らに2023シーズンをじっくりと振り返ってもらいました。その様子を前編と後編の2回に渡ってお届けします。
前編はトラックレースの振り返り。チームパーシュートの日本記録更新や、オリンピックに向けて重要な大会となった世界選手権について話してもらいました。
- 全日本選手権トラック(5月)
- アジア選手権(6月)
- 世界選手権(8月)
- アジア大会/ジャパントラックカップ(9月/11月)
全日本選手権トラック
──2023シーズンお疲れ様でした。まずはトラック競技から時系列を追って伺いたいと思います。シーズンの初めに開催されたネイションズカップについては、他のJournalの記事で取り上げていますので、今回は5月の全日本選手権から振り返りたいと思います。──例年、ブリヂストンの中長距離チームとして注目度が高い種目はオムニアムかと思いますが、今年は最後のポイントレースの、それも最終局面で松田選手と兒島選手が同ポイントで並ぶ展開で、最終的にはゴールの着順で勝敗が決し、松田選手が日本一に輝きました。観客目線ではかなり複雑な展開だったのですが、このあたりのポイントの混戦具合というのは、実際に走っている中でどれくらい意識できていたものなのでしょうか?
松田:ちょっと計算して、最後もがいたら(兒島選手に)勝てるなと残り8周くらいで思って。でも向こうも結構行きたがっていたので、いなしていなして、という感じで対応していました。
──では結構展開が分かっている中で、最後にゴールを狙いにいったという感じですね。
松田:そうですね。
──これまでタイム系の種目を得意としてきた中、今回のオムニアムで勝てたことで得意・不得意といった種目に対する印象は変化しましたか?
松田:いや、そんなに…。言ってもレースは水ものなので、僕が一つラインを外していたら展開は違ったかもしれないですし、まぁ上手くハマったっていうだけで。でも最初の頃に比べると、レースの組み立てなどは結構できるようになってきたかなと思います。
──それは経験の中で徐々にという感じでしょうか。
松田:そうですね。色んな選手を見ながら、例えば橋本英也ならこの場面でどうするだろうとか。
──練習ではレースの組み立てなどは、そんなに意識して走れないように思いますが、やはりレースの中で培われたものですか?
松田:練習の中でも模擬レースみたいなものがあるので、その中でこれまでと違う走り方を試したりすることはありますね。
──近年、全日本トラックと言えばブリヂストンの独壇場のレースになっていて、ファンにもそういった意識があると思います。選手の殆どの皆さんが拠点を共にしていて、同じトレーニング環境にいて、お互いの実力を認識している。さらに日本においてチーム外にライバルが少ない状態だということも理解している。つまりトラックの中長距離種目においては、ブリヂストンのメンバーの中から全日本チャンピオンが生まれる可能性が事実上非常に高い訳ですが、それでも全日本は特別なレースなのでしょうか?
松田:まぁ勝ったら嬉しいですよね。日本一というのが掛かっているので、それは勝ったら嬉しいです。でも通過点という側面もあります。集中はするけど「そこじゃない」というか…。目指すところはロードだったり、世界選手権(トラック)のゲームレースだったり一人一人目標が違うので。
──では全日本だからと言って特別に意識して、チーム内でギクシャクしたりするようなことも無いと。
松田:ギクシャクはしますけど(笑)。…まぁみんな感覚の擦り合わせみたいなものを全日本ではするんですよね。今の自分はどんな感じなのかなぁと。で、ちょっと想像したものと違った…で、ここから世界選まで一ヶ月二ヶ月ある…、じゃあどうしていかないといけないかと言うのを考える。そのために全日本ではリミッターみたいなものを外すことになるので。
──リミッターを外すという作業はやはりレースでしかできない?
松田:そうですね。アドレナリンとかも段違いで出ますし。
──トレーニングの時点で、だいたいお互いの実力などは分かっている訳ですよね。更に性格もよく知っていると。そんな中で勝っていこうと思うと、裏をかいて裏をかいての展開にしていかないといけないと思うのですが、結構それって勇気のいることではないですか?
山本:意外と裏をかく人間が少ないかもしれませんね。自分の持ち味をだしたり、マンツーマンになったら相手の苦手な部分を狙っていったりだとか。
──なるほど。お互いを分かっているからこその展開があるという訳ですね。
──ではチームパーシュートについてお伺いします。全日本において特にAチームは実質の日本代表チームで、ライバル不在ともいえる状態だと思いますが、今回そのような中で3年ぶりの日本記録が出ています。この辺りのモチベーションはどのようなものでしたか?
今村:アジア選手権前の開催なので、そこに向けてのコンディションの確認のような感じで走って。凄くパフォーマンスは上がっているけどピークではないという中で、どれくらいのタイムが出るかなというので色々試していました。そんな中でタイムが出たというのは、みんなで「良かったね」と。そんな感覚でした。
──どちらかと言うと通過点の中で挑んだレースではあったけど、全日本で記録は残るのでしっかり走れたという感じですね。
今村:全日本はやっぱりチームとしての見られ方ですよね。そっちのプレッシャーの方が大きいので。(世界を目指すという)僕ら選手のモチベーションと、全日本でチームとしての存在感を示さないといけないというのは、少し求められるものが違うので。でも、そこは全日本選手権ですので、ただ勝てばいいという訳ではなくて、やっぱり速くないと「ブリヂストン何してるの?」という感じになると思うので。
宮崎監督:日本のお客さんに見てもらえるのって全日本くらいですからね。シーズン通してチームパーシュートが開催されるのは、ネイションズカップか(世界選やアジア選といった)チャンピオンシップか、あとは全日本くらいなので。全日本の時は突っ込んで行ったんだよね。ギアもかけた。
今村:はい。色々試せる場であったし、記録も出たしというので、力が付いているなというのを実感したレースでした。
──例えばチームパーシュートのメンバー内のコミュニケーションについて、同じ大会内で、他の種目に移ればすぐにライバルになる訳ですが、その辺の気持ちの切換えというのは、もう慣れたものですか?
今村:そうですね。みんなでタイムを出さないといけないというのは分かっていますから。でも大会スケジュール的に一番目にやるというのも凄く良くて。
──だいたいどの大会でもチームパーシュートが最初に行われますね。それが良い方向に働いていると。
今村:だと思います。特にギクシャクしやすいんで。
──(笑)やっぱりそうなんですね。
今村:さすがに日本代表が揃っていますからね。みんな負けたくないだろうし。
宮崎監督:本当にビックリするくらい。ロードレースでは全然揉めないし、喧嘩とかももちろん無いんですけど、全日本トラックの時だけは、みんな喧嘩腰です(笑)。
──その辺りはトラック競技が各々の戦いであることの現れですよね。同じチームに所属しながらも。
宮崎監督:見ている方からすると「ブリヂストンはこれだけ人数いるんだから強くて当たり前だよね」「これだけいたら他のチームの選手は捲れないよね」というふうに見られるんですけど、実際は全然そんなこと誰も考えていなくて、チームメイトが最大のライバルとして見ている。そういう大会が全日本トラックですかね。
アジア選手権
──全日本が終わって翌月の6月にはアジア選手権がありました。チームパーシュートでは全日本での日本記録を更に1.5秒短縮しています。この快進撃の要因は何だと考えていますか?トレーニングなのか、それとも精神的な要因が大きかったのか。いかがでしょう?
今村:精神的なものですよね。やっぱりオリンピックに関係する大会であって、勝たないといけないし。(ポイント獲得の為には)タイムというよりも勝たないといけなかったけど、やっぱり勝利に対するモチベーションというのが凄く大きいと、必然的にタイムも上がってくるという。バンクコンディションも凄く良かったし、狙っている大会でのコンディショニングというのも、みんなプロフェッショナルなんで、それが噛み合った結果だといえると思います。
宮崎監督:でも、それまで結構な期間、結果出なかったんだよね。伸び悩んだというか…。メンバーの入れ替わりもあったので。なかなかタイム更新が出来そうで出来ない状態がずっと続いて、やっと今年の全日本でコンマ少しでもクリアして、それからはいい感じになってきたという感じですね。
──今村選手の個人種目としてはスクラッチが2位、マディソンは優勝という結果です。その後の世界選手権ではオムニアムで3位という輝かしい成績を挙げることになるのですが、そこに向けた調整の中で出た結果でしょうか?アジア選と世界選は他国の選手のレベルも異なると思いますが。
今村:アジアにはアジアのレースがあって、世界には世界のレースがあってという感じです。スクラッチはミスで2位になった訳ですけど…。その時には世界選手権に誰が出ると聞かされていなかったんです。もちろん団抜き(チームパーシュート)に向けてモチベーションは高かったけど、なかなか団抜きで力になれない事も多かった…。なのでシフトしてレース系の種目に集中することができたから、余計に気持ちも入っていました。
世界選手権
──8月に入っていよいよ世界選手権です。今年は自転車競技13種目が同時に開催される「スーパー世界選手権」ということで大きな注目を集めました。ナショナルチームのトラックチームは毎年直前にフランスで合宿が組まれていますが、現地(イギリス/グラスゴー)にはリラックスした感じで入れましたか?
松田:良かったですね。相当リラックスしていました。
今村:メンバーも同じ、行程も去年とほぼ同じで、勝手も分かっているしね。
──最初にチームパーシュートがあった訳ですが、予選は放映が無く、僕も日本でTissot Timing(ライブで記録が反映される公式WEBサービス)で結果を追っていました。最後に出走したイギリスチームの記録がいつまでも反映されず、結果的にDNFという事だったのですが現場では何が起こっていたのでしょうか?
松田:たぶん3走の選手が力尽きて…、おそらくハスってもいないんですよね。多分ブルーバンドに落ちて…。追い込みすぎて意識が飛んで落車したように見えましたね。
──最終局面でのことですよね?
宮崎監督:ラスト10メートル。本当に最後のコーナーの出口です。
松田:僕ら帰ろうとしていましたからね※。「(他の種目に向けて気持ちを)切り替えよう」って言って。それが決勝も走れることになって。(※:イギリスチーム途中経過から日本チームの予選敗退が濃厚であった)
──まぁでもラッキーと言えばラッキーですよね…。
宮崎監督:オリンピック出場に向けてのポイント獲得という意味では大きいですから。世界選手権は特に比重が大きいので。
──グラスゴーのバンクは記録が出にくいという情報でしたが、タイムを見てみると実際は決勝レースで3分51秒650と、5月の全日本で3年ぶりに更新した際のナショナルレコードは上回っている。トータルで考えるとそんなに悪くない記録ですね。
宮崎監督:そんなに悪くないけど、記録更新はしなかったという感じ。もっと行けるくらいの雰囲気でいたので。みんなコンディションもいいし、良い感じで入れていたんですけど。
──この時の結果は、チームパーシュートのメンバーとしてはどのように捉えていましたか?
松田:特に失敗もなく走れたので、あとは他国の結果を見るだけだなという感じでした。8位に入ってポイントを獲得するというのが目的だったので、予選通過した時点でそこはクリアできていたので。
宮崎監督:特に(松田)祥位は前半で抜けるので、後半の踏ん張りとか、ちょっと気持ちが崩れちゃったりとかというのは、祥位に関係ないわけじゃないけど、牽ききって離脱するのが彼の仕事なので。
松田:そうですね。前半のタイムをきっちり揃えるのが僕の役目です。
──松田選手はこの後、個人パーシュートに出場しますが、この時は調子が悪かったと後のインタビューで話していましたが。
松田:そうです。エンデュランスが足りなかったなと。アジア選の後、体調を崩していて…世界選まで一ヶ月あったんですけど、そのうち2週間は乗れずにいたので…。
──それでもチームパーシュートのメンバーに入っている訳ですが。
松田:まぁそこは(1走として)2㎞だけなんで。
──個人パーシュート4㎞との違いは大きいですか?
松田:もう全然違いますね。パワーの分配といって鍛える所も違って。下のパワーを鍛えれば鍛える程、エンデュランス能力が上がっていくんですけど、上のパワーが出にくくなるっていうのがありまして。ベースで全体的に上げていければいいんですけど、なかなかそれも10年単位で上げていくようなイメージのベースの作り方なんで。まぁ偏りは出てくるよなぁとは常々思ってて。
──チームパーシュートの1走としてはしっかり役割を果たせたと。
松田:そうですね。2㎞を2分ちょい位で離脱という感じです。
──このチームパーシュートでは今村選手はメンバーに選ばれていなかったのですが、それはこの後のオムニアムとマディソンに向けてという意味合いでしたか?
今村:いえ、走れなかったです。5人目のメンバーでした。単純に僕が5番手の力だったと…、それだけです。
──その割には、オムニアムで日本史上初の銅メダルということで、内容的にも積極的な走りで素晴らしいものでしたが。
今村:結果的にですけど。やっぱりどの大会も団体種目を走って、結果が良かろうが悪かろうが一回観客の前で走るっていう…緊張感も抜けるから、それが凄く好きだったんですけど。初めて(個人種目の前に)何もなく本番を迎えたから、それが少し怖かったです。チームパーシュートも走れるなら走りたかったですけど、僕がペースを落としてしまうことも多かったので…。
──それでもオムニアムのレース内容は積極的なもので、成績も伴いました。
今村:そうですね。終わってみれば。
──走り出してみたら調子は良かったですか?
今村:良かったっていうよりは、日本人は自分一人で、変に他の日本人選手の成績を気にすることもないし走りやすかったです。とにかく自分が代表としてしっかり成績残さないといけないという感じです。
──世界選での3位という結果を受けて、自分の中の意識は変わりましたか?自信とか世界的な立ち位置の再確認であるとか。
今村:気持ちの変化というか、覚悟みたいなものはあります。オリンピック予選の中では一番大きな大会でリザルトを残せたので、先行してポイントを獲得できたという意味で、ある程度余裕もできたし、これで決まったわけではないけど、多少はほっとした所もあります。
──窪木選手のスクラッチ銀メダル、今村選手のオムニアム銅メダルという結果を受けて、期待に胸を膨らませたマディソンですが、結果的には12位とお二人にとっても満足の行く結果ではなかったと思います。今後オリンピックに向けて更に争いが激化してくると思いますが、その中で考えていることはありますか?
今村:しっかり練習していくことと、その普段の練習の中で、いかに本番を想定して気持ちを入れていけるかという所ですね。只々練習していくのは誰にでもできるけど、表彰台をイメージしてやることだったり。あとはやっぱり積極性というか、積極的にできるだけの自信と努力の積み上げがないと、積極的にいけないと思うので、それを如何に積み上げていけるかだと思います。世界選手権のマディソンも、最終的にスタート前に怖気づいてしまったというのがあったので、スタートに立った時に自信をもって「やってやるぞ」と思えるだけのこれからの積み上げが一番大事になります。
──窪木選手も客観的に見ていて凄く気持ちの強い選手だと感じますが、それでも怖気づいてしまうようなことがあったのですね。
今村:(窪木選手とは)だいたい部屋が同じで、ずっとそういう話もするんですけど、僕らの思っていた事と、コーチの見立ては違って…。僕らは「一回目から(ポイント取りに)行こうぜ」って話はしていたけど実際にはそうはできなくて、後手に回った感じはありました。 僕らが銀メダル取った時(2022年ネイションズカップ第一戦)と今回の世界選のアベレージ速度は、実はほとんど変わらなくて、結果的に僕らが引きずり回されたから「すごくレースペースが速かった」というふうに捉えられることが多くなったけど、逆に僕らが攻撃する側に回っていたら、同じように引きずられるチームができる訳なので(展開は分からなかった)…。いかに気持ちを強くやれるかというのはやっぱり重要ですね。
──自分たちの気持ちと、ナショナルチームの考えとの間で少し歯車が噛み合わない部分があったけど、それを上手く擦り合わせていかないといけないということですね。
今村:それだけコーチにアピールできなかったというのもありますから。「一回目から行っていいぞ」と言ってもらえなかったのは、自分たちの力をそれまでに見せられていなかったという事です。 200周あるので最初の100周とかみんな元気じゃないですか。だから、そこで勝負してもやられるだけなんで、後半勝負しようということでした。僕らはメダル獲ってやろうと気合十分で最初から行きたかったんですけど、それはやめておこうということになりました。
──もちろんファン的にはそういう走りを見たかった部分はありますが、チームは成績の為に可能性の高い作戦を選択した訳ですから、難しい所ですね。
(ここから兒島選手が同席)
──兒島選手にもお聞きしたいと思います。世界選のポイントレースについて。2022年はチームパーシュートに出場されていて、今年は個人種目に初めて出場されたと。その中で結果は7位。世界選のリザルトなので、かなり評価できる成績かと思いますがいかがですか?
兒島:評価できますか?初出場だと言っても、僕としては納得していない部分があって…。目標としてはメダルを獲りたいというものだったので、結果としては目標に届いていないので、自分としてはあまり納得できていないです。
──ポイントレースはやはり得意種目ですか?
兒島:得意というか好きな種目ではあります。
──アジア選手権でも勝っていますし、ご自分の強さの原因はどこにあると考えていますか?
兒島:世界を見るとまだまだですけど、後半で皆が疲れているような所で、まだ力を発揮できるという部分は強みかなと思います。
──それはポイントレースの中でということですね。大会期間中ポイントレースは日程の後半に開催されることが多いですが、その辺りも関係しますか?
兒島:日程の最初に団抜きもあったんですけど、そこから期間が開いてしまうのが逆に調整が難しかったですね。トレーニングも毎日一時間位乗るくらいで…。ポイントレースが始まってすぐなのにキツいみたいなことがありました。
──そう考えると大会期間中のトレーニングの仕方って難しいものですね。逆に他のレース走っていた方がよかったりもするのでしょうか?
兒島:もしくはローラーで20分走とかをするかですね。僕はやりたいなと思ったんですけど(メニュー的にはそうでなかった)…。でも来年はしっかり相談しようと思います。
──皆さんに聞きたいのですが、今年の世界選手権は、ロードとトラックの両立という意味では、女子のロッタ・コペッキー(ベルギー)の活躍が象徴的なものでした。トラックのエリミネーションとポイントレースを勝ったうえで、更にあのアップダウンの激しいロードレースにも勝ってしまったと。これについて、同じようにトラックもロードも走る皆さんにはどのように見えていましたか?
松田:化け物ですよね(笑)。でもたぶんマチュー(マチュー・ファンデルプール/オランダ※同男子ロードレースの優勝者)がトラックに来ても勝つんですよ。さっき言ったみたいに「下と真ん中しか強くないです」というのではなくて、彼らは全体的にベースをアップしているので、どこを取っても負けないという感じだと思います。
兒島:女子のポイントレース見ていたんですけど、コペッキーと2位の選手(ジョージア・ベイカー/オーストラリア)の二人は抜け出すたびに誰も追いつけないという…、スピード域が全く違いました。見て分かるくらいの強さだったので、やっぱりロードで培った力が活きるのかなという感じですね。
──なるほど。コペッキーは元々トラックから成績が出て、その後ロードでも活躍という感じの選手だけれど、ロードでの強さが再びトラックにも反映されていると。
兒島:というのはある気がしますね。やっぱり後半であのスピードで行くというのは体力がないと絶対できない事なんで。序盤からもしっかり動いていましたし。ロードで培った体力が活きているのかなと。全体的にスピードが衰えずに走れていましたね。
アジア大会/ジャパントラックカップ
──では9月のアジア大会についても少しお話しをお聞きします。日本には映像が届いていなくて、マディソンで今村選手が骨折しながら、表彰台の真ん中に上がっている写真が衝撃的でした。この時は今村選手と兒島選手のペアで、窪木今村ペア以外の組み合わせを久々に見た気がするのですが、これはどのような経緯でしたか?
兒島:ナショナルチームのダニエルコーチの考えとしては、特定のペアでやるというよりは色々なペアを組ませて、色々な経験を踏ませて、その中で最良のペアでオリンピックを目指すという形です。2024年のネイションズカップでも、また別のペアが組まれる可能性もあるのかなと思います。
──ということは、オリンピックに向けてポイントを取るという重要な大会でも、積極的に違うペアが試される可能性もあるということですか。
兒島:あるかもしれないですね。
──それは楽しみですね。その後は橋本選手がネイションズカップで活躍して、帰ってきたタイミングでジャパントラックカップがありました。オムニアムに注目して見ると、ジャパントラックカップIが窪木選手、IIで兒島選手が獲っています。全日本では松田選手が獲っているし、相変わらず橋本選手も強いし、今や本当に誰が勝ってもおかしくないというチーム内の状態ですが、この時の兒島選手の調子はいかがでしたか?
兒島:その前にニュージーランドでステージレースを走れたのが良かったです。そこでベースの部分が強化されて、オムニアムの4種目を走っても最後まで持つくらいの体力の強化が図れたので、いいレース展開ができました。
──そう考えると兒島選手にとって、ロードを走っておくというのは重要な事のようですね。
兒島:アジア選手権の前にTOJを走っていて、そこで全日程走ったことによってアジア選手権も凄く調子が良かったので、やはりステージレースを走ってトラックレースに行くというのは僕の中で一番調子があがる手段なのかなと思います。
インタビューは後編へと続きます。
interview and text : Daisuke Fukai / INEIVE